広尾ガーデンヒルズは、日本屈指の人気を誇る高級ヴィンテージマンションです。全1,181戸から成る巨大なマンション群は築30年以上経つものの人気が衰えることはなく、今でも発売当初の約2倍で取引されています。どんなにメンテナンスをしても建物の経年劣化をなくすことができないにも関わらず価値が上がり続けている理由のひとつに、時代を経ても全く衰えない洗練された建物のデザイン性があげられます。
また6.6haの敷地内には電信柱はなく、このような景観は東京都内、いえ日本ではほとんど見られません。
この記事では、広尾ガーデンヒルズがヨーロッパをイメージして作られたマンションであることや代表的なヒル、広尾の街について紹介します。
ヨーロッパをイメージして作られた広尾ガーデンヒルズ
広尾ガーデンヒルズのデザインに大きく関わった人物が、デザイナーの圓堂政嘉です。日本の数多くの建築に関わってきた圓堂政嘉が得意とするデザインは、アメリカ式の建築デザインでした。それもあり当初の広尾ガーデンヒルズの構想は、4棟からなるアメリカ式の超高層マンションだったのです。
しかし今でこそ高級マンションの象徴と言える超高層マンションですが、70年代にはまだ建築が難しく、設計の方向転換を余儀なくされます。当初はアメリカ式の街並みをイメージしていた圓堂政嘉は、ロンドンで見たタウンハウスを元に一からデザインを描き直します。圓堂政嘉がロンドンのタウンハウスを取り入れた理由は、初めて見た歴史あるヨーロッパ建築のデザインに感動したからと言われています。
それまではアメリカ式の設計が多かった圓堂政嘉氏ですが、広尾ガーデンヒルズを設計した後は、いくつものヨーロッパ式の建築を手掛けるようになります。いかにガーデンヒルズの設計が彼に影響を与えたかが分かりますね。
ちなみに圓堂政嘉が大きく関わったイーストヒルは、ロンドンのタウンハウスの影響をそのまま受けていることが伺える素晴らしいデザインと街並みになっていますよ。
広尾ガーデンヒルズの代表的な二つのヒル
広尾ガーデンヒルズは全てで15棟ですが、3棟から成る「ヒル」という5つの区域に分かれています。広尾ガーデンヒルズはこのヒルごとでコンセプトが大きく変わり、マンションのデザインもそれぞれに異なっている面白さがあります。
この記事では、もっとも人気が高い「サウスヒル」と「センターヒル」の特徴について見てみましょう。この2つのヒルは住んでいる人の満足度の高さから売りに出されることが少なく、またたまに売り物件が出てもほとんど市場に出回る前に売れてしまうことでも知られています。
その希少性がまた物件の価値を高めているともいえるでしょう。
広尾ガーデンヒルズ:サウスヒル
サウスヒルは広尾ガーデンヒルズにあるヒルの中ではランクもデザインも別格で、唯一24時間警備員が常駐しているヒルです。サウスヒル内にはサウスヒルはD棟、E棟、F棟の3つから構成されていますが、この3つの棟には居住者以外は入ることができません。
強固な門がそびえたち、入口に24時間警備員が常駐しているセキュリティを考えれば「ガーデンヒルズの中でも別格のヒル」と呼ばれていることもうなずけますね。またここサウスヒルはセンターヒルとともに売りに出ることが少なく、そんなとこからも人気の高さが伝わります。
サウスヒルにはD,E,Fの3棟がありますが、その中でもD棟は広尾ガーデンヒルズの全15棟の中でもっとも高価な棟とも言われています。また広尾駅から比較的近く、徒歩5分程度という立地も大きなポイントです。
・竣工 1986年2月から11月
・D棟、E棟、F棟
・全187戸
広尾ガーデンヒルズ:センターヒル
広尾ガーデンヒルズの5つのヒルの中心に位置しているセンターヒルは、サウスヒルと同じく人気の高いヒルとして有名です。またもっとも売りに出ないヒルとも言われていて、手放したくない人や出ていく人も少ない、あるいはたまに売り物件が出ても予約済みの人が多いことから市場になかなか出回らないのが現状です。
センターヒルの魅力は周りを囲まれているにも関わらず、計算された設計のため眺望が良い点です。最上階からは有栖川記念公園だけでなく、お台場の方まで見渡すこともできるといいます。
そして、広尾ガーデンヒルズの「センター」にふさわしく、ヒルの1階には高級スーパーをはじめとした飲食店やATM、クリニックなどがあり、外に行かなくても生活ができてしまう利点があります。広尾ガーデンヒルズの中心部にあるためどのヒルからも近いですが、「自分が住んでいるヒル内で食材も買えてクリニックもある」というのは、とても嬉しいですよね。
・竣工 1985年1月
・G棟、H棟
・全162戸
国際色豊かな街・広尾
広尾の街を歩くと外国人が非常に多いことに気がつくでしょう。実は広尾は、今現在だけではなく歴史的にも非常に国際色豊かな街なのです。早速歴史をひも解いてみましょう。
広尾に大使館が多いのは江戸時代の名残
広尾がインターナショナルな街の要因として大使館が多いことがあげられます。世界各国の大使館が広尾周辺に集まっているため、大使館職員など多くの外国人が広尾周辺に住んでいるのです。それではなぜ、広尾には大使館が多いのでしょうか。その理由はなんと、江戸時代までさかのぼります。
実は現在大使館が建っている場所は、江戸時代武家屋敷だった場所が多いのです。江戸時代には巨大な権力を誇った武士がこの辺りに屋敷を構えましたが、明治時代になるとともに武士が消えていき、武家政治と入れ替わって始まったのが諸外国との交流です。そこで政府が考え出したのが、今は使われていない武家屋敷に大使館を建てるということでした。日本政府としても「1カ所に多くの大使館が集まった方が警備が楽」という事情もあり、この広尾周辺に多くの大使館が誘致されたのです。
インターナショナルスクールの情報
大使館が多いということで広尾周辺には外国人の子どもも多く、広尾の公園に行けば多くの外国人の子どもたちが様々な言語で遊んでいます。
このような環境ため、広尾周辺には非常に多くのインターナショナルスクールやプリスクールが点在しています。
またさらに、東京と言えどもここまで英語の教育環境が集まっている場所は他にはないので、英語教育に関心がある多くの親御さんが広尾に集まってきているのです。
それでは、広尾の代表的なインターナショナルスクールを紹介しましょう。
西町インターナショナルスクール
1949年に松方種子によって設立された「西町インターナショナルスクール」は、広尾駅から徒歩約8分という立地で、5歳から15歳までの約450名の生徒が在籍しています。無宗教であるために約30か国もの生徒が通う国際性と、100年近く前に閑静な住宅街に建てられた趣のある建物、さらには日本の国際教育を牽引してきた教育方針などから非常に人気のあるインターナショナルスクールです。
この特徴的な校舎は、今から約100年前にウィリアム・メレル・ボーリズが松方正熊男爵邸として設計したもの。その美しさと100年近く前に建てられたとは思えない頑丈なつくりやデザイン性が認められ、現在は東京都選定歴史的建造物として指定されています。
聖心インターナショナルスクール
広尾駅から徒歩2分のところにある聖心インターナショナルスクール(女子校)は、創立1908年と歴史が古く、幼稚園から高校まで擁するカトリック系の一貫校です。(キンダーガーデン=幼稚園のみ共学)
「全人格形成にかかわる精神面、知性、感性、身体の発達を目標とした理念」を掲げて1908年に設立され、教育方針は「1.魂を育てる」「2.知性を磨く」「3.実行力を養う」の3つ。現在は幼稚園から高校まで各160名で合計約600名が学んでおり、50ヵ国もの生徒が在籍しています。
聖心インターナショナルスクールはお嬢様学校として有名な聖心女子大学の系列校で、聖心女子学院外国人部を起源としてスタートしました。全国各地に複数の高校がある中でも唯一のインターナショナルスクールで、聖心女子大学と同じキャンパス内にあるため、緑豊かなのびのびとした環境の中で学べることも大きな魅力です。
さくらインターナショナルスクール
さくらインターナショナルスクールは、関西に拠点を持つ「関西国際学園」が運営するインターナショナルスクールです。全国各地に系列校があり、広尾駅から徒歩10分の麻布校は2016年にできたばかり。
特徴的なのは妊娠中から参加できる「母子クラス」や、「能力開発クラス」など、教育の目的に特化したクラスがあること。また英語ばかりの学習ではなく日本語による日本文化の勉強を深く行うことで、国際的に活躍する人材を育成しています。
モンテッソーリスクールオブ東京
日本でも人気のあるモンテッソーリ教育を基礎として学習を行う「モンテッソーリスクールオブ東京」は、2歳から15歳までが学べるインターナショナルスクールです。アジアで初の小中学校のモンテッソーリスクールとして、開校時には日本のみならずアジアからも注目を浴びました。
モンテッソーリ教育は、原則として教科書や宿題はなく、先生が板書をする黒板もありません。授業や学びの内容や学ぶ方法などは全て生徒たち自身の手に委ねられているため、だからこそサポート役の先生の力量が重要になります。このような自由なスタイルにも関わらずAmazonやGoogleの創始者の様な独創的な経営者を生み出していることでも有名で、モンテッソーリスクールオブ東京は2020年以降高校の設立を発表し完全な一貫校となることから、さらに期待が集まっています。