アジアコラム
COLUMN
不動産投資をする上で知っておきたい!アジア各国の経済状況を比較
常に変化する経済状況は、不動産投資にも大きく影響します。世界的に消費や観光、投資が喚起される動きがある現在、アジア各国の経済成長はコロナ禍前以上に加速するといわれています。ただ、ロシアやアメリカ、中国などの世界情勢の影響で、高インフレや金融引き締めなどのリスクが残っているのも事実です。
本記事では、アジア各国の現在の経済状況を国別にご紹介いたします。
フィリピンにとって不動産市場は国内で最も収益性が高く、フィリピン経済においては非常に重要な分野となっています。人口の増加や経済成長、インフラ整備などにより、フィリピンの不動産市場はますます成長すると予想されています。
≪2022年の経済状況≫
フィリピン統計庁(PSA)は、2022年の実質GDP成長率が7.6%だったと発表しました。(※1)政府の成長率目標は6.5%~7.5%だったので、それを上回ったかたちです。この結果は1976年の8.8%に次ぐ経済成長率で、周囲に比べてコロナ禍からの景気回復は遅かったものの、実に46年ぶりの飛躍的成長を見せました。
≪2023年の経済見通し≫
2022年12月6日のロイター通信では、アジア開発銀行がフィリピン経済の2023年GDP成長率予測を6.3%から6%に引き下げたことが伝えられました。インフレの高止まりや金利の更なる上昇、主要先進国の景気減速などによる予測とされています。ただ、この数値は東南アジアではベトナムに次いで2番目に高い成長率です。
さらに、マルコス大統領は今年1月、「フィリピン開発計画2023-2028」を承認しました。(※2)これにより、フィリピン政府は経済的・社会的変革の目標達成に向けて正式に始動することとなります。この計画とフィリピン政府の戦略により、フィリピン経済は2024年以降、長期的に6.5~8.0%と成長が加速していくことが予想されています。
(※1)日本貿易振興機構(ジェトロ)2023年2月2日ビジネス短信
(※2)日本貿易振興機構(ジェトロ)2023年2月6日ビジネス短信
タイの経済成長は堅調です。タイ政府による景気刺激策やタイ投資委員会(BOI)による新投資奨励策などにより国内消費や新規投資が加速し、2023年も経済成長を続ける可能性が高いと予測されています。
≪2022年の経済状況≫
タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)は、2022年の実質GDP成長率が2.6%となったことを公表しました。(※3)2021年は1.5%だったので、タイ経済はさらに成長したかたちとなりました。
いち早く「ゼロコロナ」から「ウィズコロナ」へ舵を切り始めていたタイでは、国内総生産(GDP)の約20%を占める観光業が力強く回復を見せています。それに伴い宿泊施設や飲食サービスが好調で、サービス支出は大きな成長を続けています。
≪2023年の経済見通し≫
世界需要の弱まりが懸念されており、世界銀行は昨年12月、タイの2023年のGDP成長率見通しを6月の予測4.3%から3.6%へ下方修正しました。(※4)ただし、中国が突如ゼロコロナ政策を解除したことにより、タイでは今後の観光部門の更なる回復が見込まれています。また、民間や公共の投資拡大、堅調な国内需要拡大なども影響し、2023年のGDP成長率は2022年を上回るだろうといわれています。
(※3)日本貿易振興機構(ジェトロ)2023年2月24日ビジネス短信
(※4)日本貿易振興機構(ジェトロ)2022年12月23日ビジネス短信
貿易国家のシンガポールは世界経済の鈍化の影響を受けやすく、不安定な経済成長と向き合う状況が続いています。ただ不動産市場は、コロナ禍により一旦1%程度下落したものの、その後上昇に転じ、現在も上昇傾向にあります。
≪2022年の経済状況≫
シンガポール貿易産業省(MTI)は、2022年の実質GDP成長率が3.6%となったことを発表しました。(※5)速報値では3.8%と伝えていたので、下方修正する結果となりました。政府の成長率目標3.5%をわずかに上回りましたが、2021年は7.6%だったので、前年と比べると大幅に減速しています。
リー・シェンロン首相は昨年末の新年に向けた挨拶の中でロシアとウクライナや、アメリカと中国などを例に挙げ、国際情勢の見通しは厳しく、シンガポール経済はその影響を受けるだろうと見解を述べています。(※6)
≪2023年の経済見通し≫
シンガポール貿易産業省(MTI)は昨年11月、2023年の実質GDP成長率を0.5%~2.5%と予測していました。(※7)この見通しは現在も据え置いている一方で、中国の新型コロナウィルスに関する規制が早期に緩和されている状況により、観光業や航空業などのシンガポール経済にも好影響を与えることが予測されています。
ただし世界的に経済が減速している状況により、半導体部門やシステム部門、卸売り、金融・保険などの成長鈍化は引き続き懸念されています。
(※5)日本貿易振興機構(ジェトロ)2023年2月14日ビジネス短信
(※6)日本貿易振興機構(ジェトロ)2023年1月5日ビジネス短信
(※7)日本貿易振興機構(ジェトロ)2022年11月25日ビジネス短信
マレーシアは、国際金融環境の和らぎや中国経済の回復などにより、国内経済が持ち直し始めている国のひとつです。ただ不動産市場にはパンデミックの影響が残っており、2023年も不動産部門は厳しい状況が続くと見込まれています。
≪2022年の経済状況≫
マレーシア中央銀行と統計局は、2022年10~12月期の実質GDP成長率が前年同期比7.0%だったことを発表しました。(※8)需要項目別に見ると、GDPの6割を占める個人消費が前年同期比7.4%で、前期の同15.1%からは低下しましたが、引き続き経済成長を維持する結果へ牽引しました。民間投資や公共投資など他の項目も同様に、低下したもののプラス水準を維持しています。
またマレーシア中央銀行は、2022年通年の実質GDP成長率は8.7%だったことも発表。政府の成長率目標6.5%~7%を上回り、2000年以来22年ぶりとなる高水準を記録しました。
≪2023年の経済見通し≫
今年3月、マレーシア中央銀行は2023年の実質GDP成長率を4.0%~5.0%と予測。(※9)今年2月にはマレーシア財務省も4.5%と予測していました。2022年は8.7%と高成長だったので減速している状況です。
しかしマレーシア中央銀行は、世界的な経済減速や不透明なインフレ見通しのリスクがある一方で、堅調な内需拡大や中国経済の再開などにより、マレーシア国内の情勢は改善していく可能性が高いとの見方を示しています。
(※8)日本貿易振興機構(ジェトロ)2023年2月24日ビジネス短信
(※9)日本貿易振興機構(ジェトロ)2023年4月3日ビジネス短信
世界的な景気後退が懸念される中、不動産市場の価格上昇を続けており経済は上向きです。多様な経済構造や外国人9割という人口構成などにより柔軟性のあるドバイは、今後さらに飛躍する可能性も見込まれています。
≪2022年の経済状況≫
国際通貨基金(IMF)は、ドバイを含むアラブ首長国連邦(UAE)の2022年の実質GDP成長率を5.1%と予測しており、UAE中央銀行も7.6%と見込んでいることを伝えました。(※10)2022年の経済高成長は、石油・ガス価格の上昇や観光業の回復が要因となっています。
またさらなる経済成長に向けて、連邦政府機関の公的な週休日を金・土から金(午後)土・日へ変更し、アジアや西欧諸国と営業日の足並みを揃えて、グローバルビジネス円滑化を促進していくとしています。この制度改革により、生産性やワークライフバランスが今後向上していくことが期待されています。
≪2023年の経済見通し≫
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ首長国政府は、今後10年間で32兆ディルハム(約1,152兆円、1ディルハム=約36円)規模の経済計画を進めると発表しました。(※11)貿易と外国投資の大幅な拡大をすることで、10年後には「世界の経済都市トップ3」、「世界の金融センタートップ4」となることを宣言しています。達成までの具体的な政策目標も打ち出されており、2023年は世界経済の焦点となってくる可能性があります。
世界では、新型コロナウィルスが残した影響や世界情勢などにより、長期的なインフレが懸念されています。ただ、インフレ対策として不動産投資は有利に働く面があるのでおすすめです。経済状況によっては不動産市況に影響が出る恐れがあるため、注意しておくことが重要となってくるでしょう。
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